「人間の建設」岡潔、小林秀雄
昭和40年(1965)の対談<学問の基本、好きになること>
岡「人は極端になにかをやれば、必ず好きに
なるという性質をもっています。」
<数学と感情>
岡「数学は知性の世界だけに存在しえないと
いうことが、四千年以上も数学をしてきて、人は
はじめてわかったのです。」
岡「最近、感情的にはどうしても矛盾するとしか
思えない二つの命題をともに仮定しても、それが
矛盾しないという証明がでたのです。」
岡「知性や意志は、感情を説得する力がない。
ところが、人間というものは感情が納得しなけ
れば、ほんとうには納得しないという存在らしい
のです。」
<日本人>
岡「私は日本人の長所の一つは、時勢に合わない
話ですが、「神風」のごとく死ねることだと思い
ます。あれができる民族でなければ、世界の滅亡
を防ぎとめることはできないとまで思うのです。
あれは小我を去ればできる。小我を自分だと思って
いる限り決してできない。
・・・
欧米人にはできない。欧米人は小我を自分だとしか
思えない。いつも無明がはたらいているから、真の
無差別智、つまり純粋直観が働かない。従って、
ほんとうに目が見えるということはない。
欧米人の特徴は、目が見えないが、からだを使う
ことができる。・・・
欧米人の特徴は運動体系にある。」
小林「あなた、そんなに日本主義ですか。」
岡「純粋の日本人です。いま日本がすべきことは、
からだを動かさず、じっと座り込んで、目を開いて
何もしないことだと思うのです。
日本人がその役割をやらなければだれもやれない。
これのできるのは、いざとなったら神風特攻隊の
ごとく死ねる民族だけです。
そのために日本の民族が用意されている。」