「貧困」の信仰
「貧しいということ、すなわち世間的な事物、富・力・名に頼っていないこと、しかも、その人
の心中には、なにか時代や社会的地位を超えた、
最高の価値をもつものの存在を感じること、これが
”わび”を本質的に組成するものである。・・・・
「貧困」の信仰、おそらくは日本のような国には
極めてふさわしい道である。
西欧の贅沢品や生活の慰安物がわが国を侵す
ようになっても、なお、”わび”道に対するわれわれ
の憧憬の念には根絶し難いものがある。
知的生活の場合でも、観念の豊富化を求めない
し、また、派手でもったいぶった思想の配列や
哲学大系のたてかたも求めない。
神秘的な「自然」の思索に心を安んじて静居し、
そして環境全体と同化して、それで満足すること
の方が、われわれ、少なくともわれわれのうちの
ある人々にとって、心ゆくまで楽しい事柄なので
ある。」